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大阪地方裁判所 昭和32年(ワ)1086号 決定

破産者鈴木商事株式会社破産管財人 原告 津田勍

外一名

被告 鈴木政広

外四名

右被告等法定代理人親権者母 泉山喜代

主文

本件を盛岡地方裁判所に移送する。

理由

原告等は、「被告等は原告等に対し金四〇〇、〇〇〇円及びこれに対する昭和三二年三月二九日から支払済まで年六分の割合の金員を支払え。訴訟費用は被告等の負担とする。」との判決と仮執行の宣言を求め、その請求原因は、

「大阪市東区備後町四丁目三六、鈴木商事株式会社(破産会社)は、大阪地方裁判所昭和二九年(フ)第三四一号第六七〇号併合破産事件につき、昭和三一年二月二九日同裁判所より破産宣告され原告等は、その破産管財人に選任された。

原告等は、被告等の父鈴木堅造の引受をした左記為替手形四通(本件手形)の所持人である。

(1)金額、一〇〇、〇〇〇円

支払期日 昭和二八年一二月二七日

振出日  引受日、同年一一月一〇日

支払地  宮古市

振出地  大阪市

支払場所 岩手殖産銀行宮古支店

振出人、受取人 破産会社

支払人、引受人 新美商店事鈴木堅造

(2)、金額 一〇〇、〇〇〇円

支払期日 昭和二九年一月三〇日

振出日、引受日、昭和二八年一二月五日

その他(1)と同一

(3)金額 一〇〇、〇〇〇円

支払期日 昭和二九年三月二〇日

振出日、引受日 昭和二八年一二月二一日

その他(1)と同一

(4)  金額 一〇〇、〇〇〇円

支払期日 昭和二九年五月三〇日

振出日、引受日 昭和二九年二月二〇日

その他(1)と同一

鈴木堅造は、昭和三三年五月一〇日死亡し、被告等は遺産相続をした。

よつて、原告等は、被告等に対し、右手形金合計金四〇〇、〇〇〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和三三年三月二九日から支払済まで年六分の割合の損害金の支払を求める。」というのである。

よつて考えるに、本件訴は、手形金とこれに附帯し、これに対する遅延損害金の支払を求めるものであるが、被告等の普通裁判籍所在地の裁判所及び主たる請求である手形金の義務履行地の裁判所はいずれも盛岡地方裁判所である。

原告等は、「本訴請求中損害金請求部分は、持参債務である損害金の義務履行地として、大阪地方裁判所に管轄があり、手形金請求部分は、損害金請求に併合された請求として、民事訴訟法第二一条により、大阪地方裁判所に管轄がある。」と主張する。

しかし、手形金の債務不履行による遅延損害金債権は、本来の債権である手形金債権の内容の拡張たる性質を有するものであり、本来の債権である手形金債権は、呈示証券性、受戻証券性を有する取立債務であり(手形法第三八条第三九条)、遅延損害金と同じく本来の債権である手形金債権の内容の拡張たる性質を有する手形金に対する利息債権も、本来の債権である手形金債権と同じく、呈示証券性、受戻証券性を有する取立債務である(手形法第四八条第五〇条)から、手形金の債務不履行による遅延損害金債権も、本来の債権である手形金債権と同じく、呈示証券性、受戻証券性を有する取立債務である、と解するのが相当である。

従つて、本訴請求は、盛岡地方裁判所の管轄に属し、債権者の住所地の裁判所である大阪地方裁判所の管轄に属しない。

よつて民事訴訟法第三〇条第一項を適用し、主文の通り決定する。

(裁判官 小西勝)

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